それはどうかな

心に引っ掛かったことを書き留めます

「英雄色を好む」真理か言い訳か

『青天を衝け』が予想外に面白く
今まで全くノーマークだった
渋沢栄一という人物の魅力にワクワクし
(演者・吉沢亮さんの功績大)
よせばいいのにwikiやら何やらを読み漁って
知りたくないことを知ってしまった時の
ガッカリ感たるや……。

当時の、いや、古から脈々と受け継がれる
功成り名を遂げた男の
目移り、ちょっかい、不道徳行為。

分かってるんですよ。
現代の倫理観で捉えちゃいかんことは。
分かっちゃいるけど……ねぇ。

結構早くに渋沢翁のお盛んぶりを知ったので
千代に思いを募らせてた時も
「でも結局、他所に女作るんだよねぇ」だったし
久しぶりに千代とうたに会って感激してた時も
「でも結局、他所の女孕ませるんだよねぇ」と
いささか冷めた気持ちだっんですよ、私。

それにしてもキャラクターとして
義理人情に厚く
一本気で爽やか好青年に描くだけ描いといて
いきなりアレでは、ちょっと唐突過ぎやしませんかね。

思い描く理想の日本に、近付きそうで近付かないもどかしさで悶々としてたから?
儚げな女に「ウチの大事な人に似てる」と言われたから?

えっ、そんなんでいきなり初対面の女とナニしようと思うかね。
今まで文句ひとつ言わずに支えてくれた千代を
裏切ってしまうと思わんかったのかね。

元々そういう癖があったのなら
千代と長く離れていた、京都、パリ滞在時代に
やらかしてた方が自然と言えば自然だと
思うのです。

それが、念願の家族同居が叶い
仕事も私生活も充実した最中に……何故?

ん?充実してるからこそなのか?

思えば、栄一と丁々発止やってた伊藤博文
何なら現代のお偉いさんたちだって
そっち方面は当然のように派手な御様子。
いわゆる「英雄色を好む」ってヤツ。

世に出る傑物は、持って生まれた才覚や運に
恵まれているだけでなく
なんと言っても溢れ出る力強さが必須。
マムシやマカのサプリの謳い文句みたいな奴じゃなきゃ
大事は成し遂げられないのも一理。

グングン上り調子に溢れ出ちゃってるんだもの
そりゃそうだわね。

加えて、優秀な遺伝子の持ち主としては
是非とも大量にバラ撒きたい欲求が出てくる。
現に、栄一の嫡子庶子
そしてその配偶者の顔ぶれが凄いのなんの。
各界の錚々たる面々で、まさに華麗なる一族

後にお妾さんとなる、今回御登場の大内くに。
栄一と彼女との間にできた娘の夫は
なんと、兄ぃ尾高惇忠の息子で
その息子の息子、つまり栄一のひ孫が
このドラマテーマ曲を演奏するN響の指揮者
尾高忠明氏だというんですから、驚きです。

渋沢栄一の、ちょっと大きな声では言えない一面をどう扱うのか。
やっぱり知らないフリはできなかった
避けて通るわけにはいかなかったのでしょう。



と、ここまで、田嶋陽子センセイが聞いたら
烈火の如くお怒りになりそうな論を展開しましたが
やはり正妻・千代の気持ちを思うと
「これだから男ってヤツは……」なんですよね。

父っさまがこのことを知らないで亡くなったのは、父っさまにとって良かったと思います。
息子・栄一の思い通りの人生のために
嫁・千代がどれほど尽くしてきたか
一番分かっているのは栄一の両親だから。

父っさま亡き後、果たして母っさまの知るところとなるのか。
「栄一、ちょっとここに座るだんべ。
 お前、千代の何が不満だい」と
小一時間説教かますのか、否か。

新政府の主導権の攻防よりも
そっちの方が興味津々でございます。

そして、何より私が引っ掛かるのは
この渋沢栄一という人
自分のやらかしを棚に上げて
子供たちや世間に対して「道徳」の必要性を説いていたという
ブラックジョークのような逸話があるそうで。

ネット用語「おまいう(おまえが言うな)」の
語源と言ってもおかしくない話。

こういうお父さんを冷めた目で見ていた息子さんもいたみたいですから
まぁ、自業自得をちょっとは味わったのかもしれませんね。


あと、もう一つ気になることが。
千代が見咎めた、栄一の靴下の繕い。
わざわざ赤い糸でするとは、なかなかな女。
史実どおりであるなら
今後、千代とバチバチになるような予感。

いろんな意味でワクワクします。