それはどうかな

心に引っ掛かったことを書き留めます

感動には適量が有ってだね

「感動の〜」とか「絶対に泣ける〜」とかを
キャッチコピーに付ける映画やドラマって
よく見かけますよね。

ひねくれ者の私は
昔からどうもその手の謳い文句が苦手で

感動するかどうか、泣くかどうかは
観る側のこっちが決めること。
作り手側から押し付けられるのは
真っ平御免之助だい!と
斜に構えてしまう質なのでございます。

これまで観てきて、なんとなく
その予兆を漂わせていた『テッパチ!』ですが

第6話で訓練生時代が一区切りということで
盛大に「感動」を押し付けて……あ、いや
高らかに謳い上げて来ましたよ。

ネタバレいたします。







自衛隊の訓練で
山の中にほっぽられて、自力で帰って来る
みたいなのがあるらしいとは
昔の映画(『野性の証明』だったかな?)で
知ってはいました。

でも、宙たちはまだ訓練生ですから
今回は25kmを半日でという小規模なもの。

とは言え、厳しい戦闘訓練の後の
重いリュックを背負っての山道行進ですから
これを終えれば晴れて一人前
訓練の集大成に相応しい過酷さです。

そりゃ、足も挫くでしょう。
しかもオマケの激しい雨ですから
泥に足を取られて滑落大怪我も
充分、有り得る。

満身創痍の状態で、第1班の皆が一致団結
培ってきたチームワークで頑張る姿は
たしかに素晴らしいと思いました。

やさぐれ、落ちこぼれ、協調性も無かった連中が
よくぞ、ここまで……と。

なので、私としては
これでもうお腹いっぱい。
感動のピークは充分味わったわけです。

なのに、遠慮するな、もっと食えと
容赦なく口に「感動」をねじ込んでくるのですね、このドラマは。

それは何か。
主人公・宙の家族問題です。
宙の挫折の切っ掛けともなった、母親の再婚。

自衛官で身を立てようと明るい兆しが見えた時
馬場の円満な親子関係を目の当たりにしても
腐らず、優しい気持ちで母の前に現れた宙に
再婚後、音信不通だった息子に

あの母親は何と言ったか。

「どうして、ここに……?」

そりゃぁ「俺のことが邪魔なんだろ。
別に俺も必要としてねぇし」って
言いたくもなりますよ。

そういう複雑な関係の母親が
何故か、大事な最終訓練の直前に
何故か、事故で危篤ですって。

親の死に目か、大事な訓練か
二者択一を迫られた宙ですが
「最後までやり遂げたい」と訓練に残り
そして、それが結果として
皆の士気を上げたことは確かです。

「お母さんの大事な時に、訓練を優先した宙くんの気持ちを無駄にしてはいけない」と
いうことでしょうが
馬場以外の、宙の生い立ちを知らない皆は
そう思って当然でしょう。

ですが、宙にとっては
「母にさえ捨てられた自分が取るべき道」として
最終訓練にクリアすることを選んだのは
特別、苦渋の決断ではなく
ごく自然だったと思うのですね。

言わば、皆のモチベーションを上げたのは
「親子はこうあるべき」を前提とした
単なる勘違いなのです。

ここに引っ掛かっちゃったら
「感動の」母子対面を見ても、モヤッたまま。
都合よく事故で重体、都合よく持ち直す
都合よく再会、都合よく和解。

第2部に向けて
宙の過去は大精算したかったのかな?と
疑いたくもなります。

私はむしろ、この家族問題を引っ張って
最終回、晴れて一人前の自衛官になった宙が
災害か何かで進退窮まった母たちに
救助現場で偶然再会(このドラマ、偶然が好きだから笑)
……なぁ〜んてのを想像してたんですけどねぇ。

積年のわだかまり
なんか、あっさり解決しちゃったなぁ、と
拍子抜け。

この不幸な生い立ちが、宙のキャラクターを
重層的にしていたのは確かだし
町田くんもかなり頑張って表現していたので

暗さを秘めた宙くんは、これでさようなら
第2部からは新生・国生宙だぜ!だとしたら
せっかくの好演が勿体ない。

そして「感動の適量」の点から言うと
私たちが知り得なかった
自衛官という人たちの実態やら
訓練の様子やらを全面に出してくれれば
それでもう充分、心打たれるものになると
思うのですね。

この最終訓練で皆の心が一つになったのは
一朝一夕で出来上がったものではなく
出会いからここまで、反発したり打ち解けたり
色々を経てきた過程をしっかり描いてきたからこそ
説得力を持って「感動」させてくれたのです。

遂に修了式を迎え
自衛官の制服に見を包んだ彼らの誇らしげな姿に
自然と目が潤み

八女中隊長から一人一人ヘ掛けられた言葉に
「修了式終わったらボコボコにしようぜ」なんて言ってた奴らが
心から感謝の気持ちを抱くシーンで

わたくし、不覚にもティッシュを目頭に
当ててしまいましたよ。
これぞ「感動」ですな。




ところで、ところで
宙くんの片思いの件ですが(笑)

「連絡先を教えてほしい」と
清水の舞台から飛び降りる覚悟の宙に
桜間教官「この先、業務で困ったら
いつでも相談しなさい」とは、これ如何に?

「男、いるんすか?」に対して
「いないわよ」って答えたのは
宙の気持ちを分かってるってことじゃ
なかったんすか?

好意を持ってそうで、肝心な時は上司の顔。
これは、冒頭、酔っぱらい丸山のモノマネ
「男ども、ひれ伏しなさい」が
大当たりのようですね。

奇しくも(予想どおり?)配属先では
二人は上司と部下。
さっきの感動の、舌の根の乾かぬうちに
こんな不謹慎なこと言うのもなんですけど

クールビューティーとマッチョイケメンで
見ようによってはSMもどきの駆け引きが
繰り広げられるのか?と

それはそれで
八女のおっさんじゃないけど
「フゥーーッ!!」な展開が楽しみな
第2部です。