それはどうかな

心に引っ掛かったことを書き留めます

平九郎の最期に岡田健史の未来を見る

私には徳川慶喜という人が
やはり理解できません。

元々、評価が分かれる人物なのだそうで
人を見る目の確かな平岡円四郎が
見込んだほどの傑物であると同時に
天璋院が面罵するほどの腰抜け野郎でもあり。

私はやはり天璋院の怒りが腑に落ちるのです。
百歩譲って、烈公の教えを守り
薩長が掲げた錦の御旗に弓を引けなかったのだとしても、「逃げ帰った」という事実が
徳川家を支える人々に顔向けできない醜態であることは明白。

せめて武士らしく腹を切るならまだしも
この人、この先も生き長らえて
明治ライフを満喫し、あろうことか
ちゃっかり爵位まで頂いちゃうってんだもの。
(それも本を正せば、錦の御旗に逆らわなかったからでしょうけど)

官軍と戦って命を落とした家来たちからしたら
ふざけんな,この野郎!じゃありませんか。

彰義隊を結成し、忠義の真心を訴えた成一郎に対して、すべてを諦めたような表情(私には迷惑そうにも見えました!)の慶喜に腸が煮えくり返りました。

ここで「もう無理はしないでくれ」とか
「私のために命を粗末にするな」とか
せめて一言あったなら
平九郎もあんな最期を迎えることはなかったんじゃないか。

そう思うと、直接手を下した薩長より
主君として、家来の行く末に責任を取らない
慶喜への怒りの方が大きくなるのです。


その、死ななくてもいいはずだった平九郎。


平岡円四郎暗殺シーンと並び
おそらく、今ドラマの名場面に数えられるであろう,平九郎の最期ですが。

これを現在進行形ではなく
太夫が伝蔵からの伝聞で知るのと平行させたのは、効果的だったと思います。

平九郎の運命を左右したのは
他でもない篤太夫です。
観ている我々は、責任を痛感する篤太夫の心情を嫌というほど感じながら
平九郎の最期に立ち会うことになるわけです。

もう、辛さの相乗効果で
太夫に負けないくらいの大粒の涙が……


「若手イケメン俳優」というものに
あまり信頼を置いていない私
申し訳ありません、岡田健史さんを拝見するのは、今ドラマが初めてでございました。

確かに顔はいいけど、どうなの?演技は。
なんて舐めくさってたことを
土下座して謝りたくなったのは
満身創痍で一人はぐれ、取り囲む薩長兵に向かって命懸けのハッタリかました時です。

血洗島で「兄ぃ、兄ぃ」と
いつも羨望の眼差しで兄たちを見つめていた末っ子の、どこにこんなふてぶてしい野性的な顔があったのか。

怪我の手当てをしてもらった民家で
懐かしいお蚕様を手に取った時の
優しくも儚げな表情。

ていからもらったお守りを握り
最後の力を振り絞って、故郷を目指そうと
立ち上がる悲壮な姿。

とうとう崖っぷちに追い詰められ
絶望の中に武士としての覚悟を決める瞬間。

雨霰の銃弾を受けながら
武士としての名乗りを上げ
敵に討ち取られたのではなく
武士らしく自刃して果てる。

本物の由緒正しい武士なのに
生き恥を晒すこととなった慶喜との対比を
俳優・岡田健史は見事に演じ切りました。


彼のインタビュー記事を読みましたら
血洗島での末っ子平九郎時代から
演技プランを立てていたそうです。

それを知って、私は得心しました。
血を吐きながら、今まさに絶命せんとする時
その「兄ぃ、兄ぃ」と言っていた頃の平九郎の顔が、私の脳裏に浮かんで来たのです。
あの平九郎が……と。

地道に積み重ねた努力が形となって現れる。
こんな素晴らしい演技を見せてくれる俳優が
まだ22歳だと知って、驚いたのなんの。



【岡田健史「僕を信じて最期を見届けて」】
https://www.nikkansports.com/m/entertainment/news/202108160000494_m.html?mode=all&utm_source=AMPbutton&utm_medium=referral


「お前に演じてもらって、俺はうれしい」と天国の平九郎に思ってもらえただろうか。

いやいや、むしろ平九郎本人が乗り移ったようでしたよ。



………え?土方歳三
あぁ、そういえば、なんか洋服着て
ヘラヘラしてたのがいたねぇ。

今回、この人に関して言いたいことは
何もございません。