それはどうかな

心に引っ掛かったことを書き留めます

君は萌えているか

町田啓太という俳優が大きく跳ねたのは
『チェリまほ』の黒沢役が大当たりしたから。
で、その『チェリまほ』は 
言わずと知れた日本BLドラマのヒット作。

ゆえに「こんな町田啓太が見たい」に
BL要素が入り込むのは必然かもしれないし
それをまったく予想だにしてなかったのは
只々、私のうっかりミスでございます。

やけに権太を慕っていた中野くんの登場で
まさかの「BL的なもの」を見せてきた
僕ドラ・ダメな男じゃダメですか?第5話。

部品は揃ってるのに
「違う、違う、そうじゃない」感満載で
私、かなり面食らっております。





失意のドン底にあった時
たまたま優しく手を差し伸べてくれた権太を
心の拠り所に、精進してきた中野くん。

突然連絡が途絶えても
ずっと権太の華やか嘘SNSを鵜呑みにして
再会後も騙されたままなら
「先輩、一緒に起業しませんか」も理解できます。

が、夢にまで見た憧れの先輩の
不甲斐ない実態を知ってもなお
その挙動不審の権太婆ちゃんと
今後、仕事で苦楽を共にしようってんだから

「おいおい中野くん、頭大丈夫か?」だし
権太婆ちゃんは権太婆ちゃんで
若い男に懐かれたら、そりゃ浮かれるわな。

という、外見だけ見れば
長身イケメンと可愛い男子の大接近で
「BL的なもの」は成立するのかもしれませんが

如何せん、長身イケメンの中身は婆ちゃん
可愛い男子に恋慕の情は皆無なので
「BL」っぽい体裁を取りつつ
勘違いの笑いを醸そうじゃないかということなんですね。

実はこの点が引っ掛かっておりまして。

コメディとして、こういう表現は
有りなのか無しなのかわかりませんが

BLを心から愛する私としては
(本当に個人的見解で申し訳ありません)
おちゃらかしの道具に
BL的要素を使われるのには抵抗があるのです。

今回、何度もBLを連想させる……っていうか
まさにそれを狙ってる場面に出くわし
その度に、婆ちゃんの陰の声(それも宮崎美子さんではない?加工?)「キュンだべ〜〜」で
現実に引き戻されました。

散々、BL臭を嗅がせておいて
中身婆ちゃんと、先輩を慕ってるだけの後輩の間に恋愛要素なんて有るわけないじゃん
何、期待してんだよ!目ぇ覚ませよ!と
横っ面張られたような……

別に期待なんかしてないわい。
むしろ、権太(町田くん)のキュンぶりを
いちいち婆ちゃんに変換しなきゃならないから
面倒くさいったらありゃしないのよ。

そのモヤモヤが一気に量産されたのは
畑が気になるからと群馬へ帰る権太婆ちゃんに
起業を持ち掛けた中野くんが同行し
夜、一緒に風呂へ入る入らない、どっち?
ってことになったシーンでございます。

片田舎の一軒家の別棟の風呂となれば
虫とオバケ嫌いの中野くんが恐怖のあまり
権太婆ちゃんに「一緒に入ってほしい」と
懇願するのは道理。

外見は男同士だから何の問題もないのに
婆ちゃんと言えども一応「女」なので
恥じらいやら何やらによる逡巡を
「男」の権太が見せてしまうのですね。

ぼんやり灯る灯りも雰囲気たっぷりで
夜の脱衣場が、いきなりエロティックな場に
なってしまって、さあ大変!
ということなんですが

さあて、お立ち会い。
婆ちゃんが権太の身体になってこの方
一体、何回お風呂に入りましたか?
もっと言えば、何回トイレで用を足しましたか?

その度に、自分の身体の「異物」を
目の当たりにしてきたでしょうに。
っていうか、高齢になると
男とか女とかを超越した生き物になるような
気がするんですけどね。

男女間での入れ替わりを題材にした名作映画
故・大林宣彦監督の『転校生』では
思春期の男女ということもあって
この身体的違和感問題はちゃんと描かれていました。

が、このドラマでは
今の今までまったくスルーだったのに
予期せぬBLチックになった途端
「心の準備が〜〜!」と、きたもんだ。

恥じらう町田啓太。
女走りで逃げる町田啓太。
たしかに、もう二度と見られないであろう
レア中のレア町田啓太。

しかし、それらを「見てみたかった」のかと
問われると………うーん。

ボーイズラブ」は文字通り
「ラブ」が介在して初めて成り立つ世界。
外見男同士のやり取りを
ただBLに寄せてみただけを見せられても
正直「なんだかな」としか思えないのです。



そっちの先輩後輩コンビには
すっかり興醒めでしたが
婆ちゃんの病気を知ってしまった権太のカツヨの

このままでは自分が死んでしまう不安と
青春を取り戻した権太婆ちゃんに
身体を返してほしいと言い出せない懊悩が
入り交じった様子には胸を打たれました。

この、難しさを要求される役が
宮崎美子さんの方で良かったですね。
お婆ちゃんの姿形で、祖母を思い遣る孫が
しっかり顕れてました。

そして、権太への思いを断ち切ろうと
こちらも故郷群馬に帰って来た葛西ちゃん。
「どうせ吹っ切るなら」と
母親が勧めるお見合い写真の中に
あろうことか即行振ってしまった有川くんが!

大事なことを阿弥陀くじに頼ってしまう
運命論者の葛西ちゃんが
いろいろと「運命」を感じて
有川くんに行きそうな雰囲気ですが

こういうお話は
得てして元々の鞘に収まるのが定石なので
多分、有川くんはまた振られるでしょう。

あの可哀想で少々ウザい感じは面白かったし
あれ切りなら勿体ないなと思ってたので
再登場で、どんなズッコケを見せてくれるのか
楽しみです。