それはどうかな

心に引っ掛かったことを書き留めます

自衛隊は便利屋にあらず

いよいよ、自衛官としての本格始動となった
『テッパチ!第7話』
我らが宙くんは、早速手痛い洗礼を
受けることとなってしまいました。

訓練と実践、見ると聞くとは大違い
思ってたんと違う!なんてことは
自衛隊のみならず、どんな職業でも
経験することですよね。

自然を相手にしたものはもちろんですが
一番厄介な相手は、生き物、特に「人間」!
ホントに世の中にはいろんな人間がいます。

どんな無理筋が来ても
上手くコミュニケーションを取り
しかも身に付けたスキルを発揮しなければならない。

果たして、新米自衛官の宙は
初めての任務をつつがなく遂行できるのか?!

ネタバレいたします。








早速,配属された部署の先輩たちから
水鉄砲責めされるわ、大食い強制されるわ
ほとんど、体育会系大学生のノリで扱われ

歓迎なんだかイジメなんだか
宙と馬場にとっては地獄の下っ端生活で
嘆きのスタートです。

(顔にマジックで盛大に落書きされた町田くんは保存版ですぞ)

またまた偶然、廊下でバッタリの桜間に
「訓練生時代と違って緊張感あるでしょ?」と聞かれても
「あんなガキっぽい人らが国守ってるなんて
笑えるわ」
なんて皮肉混じりに答える宙。

それに対して、桜間は
「アナタ、何も分かってないわね」と
まぁ、いつもより余計に冷たい顔するのですが

いやいや、エスパーじゃあるまいし
この段階で
先輩たちの「なんとかハラスメント」紛いに
海より深〜い訳があるなんて分かりませんよ。

ここは宙の素直な感想の方に軍配ですな。
(加えて、場を瞬時に察し「俺、トイレ…」
と機転利かせた馬場もグッジョブ!)

もう、桜間さん、恐いよ~
でもね、何気ない瞬間に見せる戸惑いの表情に
フッと「女」の顔が過るんですよ。

氷のような桜間の、超貴重な「女」を
唯一人、垣間見ている宙が
惚れないわけがないんですよねぇ。
難攻不落だけど、頑張れ宙(笑)

さて、そんな彼女の
冷酷無比な言葉の意味が分からないまま
遂に、大雨警報による初めての出動を迎え
緊張もやる気もマックスの宙。

これから来るであろう大雨に備え
避難してくる近隣住民を体育館に誘導する
という任務に付いたのですが

そこには「人間ってのは、まったく……」を
実感する場面が待っていたのでした。

一度、避難場所に来ておいて
「忘れ物を取りに行く!」と言い出す住民。

コレ、絶対、本物の避難状況でも
充分有り得るパターンですね。
必ずいるんですよ、勝手なことやり出す人が。

今回は、あるお婆さんが
「大事な主人の位牌が入ったカバン」を
どうしても取りに行くと言って聞かず
その涙ながらの訴えにほだされた宙が
代わりに自分が取りに行くと言ってしまい

それを聞き付けた他の
「忘れ物を取りに行きたい」人たちが
我も我もと宙に頼み出し
困惑しながらも全部引き受けてしまうという
愚行(私は敢えてこう言います)を
宙が犯してしまったわけです。

それによって、命令されていた持ち場を勝手に離れ
結果として、次の任務に支障を来たし
怪我人を出してしまいました。

私は、自衛隊というものは
(賛否両論あるでしょうが)
「こっちから戦争を仕掛けない軍隊」だと
認識していますので

隊としての統率を乱す勝手な行為は
許されないことだと思うのです。
それは即、隊の全滅に繋がるからです。
自衛隊が無くなったら
一体誰がこの国を、国民を
守ってくれるのですか?

個人の忘れ物から、話がデカくなってしまいましたが
一つ、小さな例外を勝手に作ってしまうと
取り返しがつかない事態を招いてしまうかもしれない。
という、とても分かりやすい事例を
示してくれたと思います。

懇願する人の気持ちに応えたいという宙は
根が優しい青年なんですね。
それはそれで良いことですが

あなた、千手観音じゃないんだから
自分一人の手に余る、ましてや命令外の事態ですから
勝手に判断せず、上司や先輩に一言相談しましょうよ。

と、ここまでは自衛官・宙側の反省点。

次こそが、私の一番言いたかったこと。

住民たちよ、自衛隊は便利屋じゃないぞ!

今回、どうしても取りに行かなければならないと言っていた物。
 ・亡くなった主人の位牌
 ・銀行の通帳、印鑑
 ・家族のアルバム
 ・仕事のデータが入ったノートパソコン
 ・持病の喘息の薬
等など。

うーん、冷たいかもしれんけど
避難する時に忘れてきた時点で
「どうしても必要で大切な物」とは
言えないよねぇ。

中には、泡食って避難してきて
避難所で落ち着いてみたら
「あ、アレ持ってくればよかった……」なんて
思いついたような物まで。

これは、常日頃「まさかの事態」を想定して
避難時に何を持ち出すか
各自よーく考えとけ、という
自衛隊からの隠れメッセージなのでは
ありますまいか?

な〜んてことを思ってしまいましたぞよ(笑)

国を守る。国民の命を守る。
それは確かに自衛隊の仕事でしょう。
だからこそ、守られる側は
彼らの仕事の邪魔をしてはならないと
思うのです。




今回、大失敗を喫した宙ですが
教え子の初の出動を案じていた八女のおっさんに励まされ
そして、改めて自衛官としての使命を諭され
こうやって人は成長していくんだなぁ、と
感慨もひとしおです。

このイケメンマッチョ師弟コンビ
いいですね~~

それから、自衛官の溜まり場と思しき
居酒屋ちゅうとん家(ネーミング!)での
飲み会の場面。

パワハラ軍団かと思いきや
大木班長率いる先輩たちのムチャブリは
宙と馬場に、どんな事態にも適応する能力と
その能力を発揮できる体力を付けさせるためだったのだよ

と(多分、桜間が言ってた意味がコレ)
事の真相が分かって
二人、納得したようですが。

先輩たちのやってた行為が、ほとんど
ハラスメントと言われてもおかしくないもの
だったことを考えると

このドラマでは双方の間に
しっかり信頼関係と思いやりが感じられたから
良いようなものの

「君のことを思ってしたことなんだよ」が
イジメる側の体のいい言い訳に使われるのは
ちょっと、どうなのかな?という懸念が
無きにしも非ず。

今、コンプラコンプラって
うるさい世の中ですからね。
老婆心ながら。



それと、その場面に何故か
宙と同室の野村がいなかったのが
引っ掛かります。

彼は新入りの二人より年下ですが
自衛官としては「先輩」なので
まぁ、威張ること威張ること。

それに宙が高校時代、ラグビーの有望選手だったことを突き止め
自衛隊ラグビー部顧問に
宙の意向も無視して、勝手に渡りをつけるなど
かなりデリカシーの無い男。
(イビキも強烈だし!)

今後、他の先輩とは違う
変な動きをしてくるんじゃないかと
疑っております。
(アニメオタクみたいだし!)(笑)

感動には適量が有ってだね

「感動の〜」とか「絶対に泣ける〜」とかを
キャッチコピーに付ける映画やドラマって
よく見かけますよね。

ひねくれ者の私は
昔からどうもその手の謳い文句が苦手で

感動するかどうか、泣くかどうかは
観る側のこっちが決めること。
作り手側から押し付けられるのは
真っ平御免之助だい!と
斜に構えてしまう質なのでございます。

これまで観てきて、なんとなく
その予兆を漂わせていた『テッパチ!』ですが

第6話で訓練生時代が一区切りということで
盛大に「感動」を押し付けて……あ、いや
高らかに謳い上げて来ましたよ。

ネタバレいたします。







自衛隊の訓練で
山の中にほっぽられて、自力で帰って来る
みたいなのがあるらしいとは
昔の映画(『野性の証明』だったかな?)で
知ってはいました。

でも、宙たちはまだ訓練生ですから
今回は25kmを半日でという小規模なもの。

とは言え、厳しい戦闘訓練の後の
重いリュックを背負っての山道行進ですから
これを終えれば晴れて一人前
訓練の集大成に相応しい過酷さです。

そりゃ、足も挫くでしょう。
しかもオマケの激しい雨ですから
泥に足を取られて滑落大怪我も
充分、有り得る。

満身創痍の状態で、第1班の皆が一致団結
培ってきたチームワークで頑張る姿は
たしかに素晴らしいと思いました。

やさぐれ、落ちこぼれ、協調性も無かった連中が
よくぞ、ここまで……と。

なので、私としては
これでもうお腹いっぱい。
感動のピークは充分味わったわけです。

なのに、遠慮するな、もっと食えと
容赦なく口に「感動」をねじ込んでくるのですね、このドラマは。

それは何か。
主人公・宙の家族問題です。
宙の挫折の切っ掛けともなった、母親の再婚。

自衛官で身を立てようと明るい兆しが見えた時
馬場の円満な親子関係を目の当たりにしても
腐らず、優しい気持ちで母の前に現れた宙に
再婚後、音信不通だった息子に

あの母親は何と言ったか。

「どうして、ここに……?」

そりゃぁ「俺のことが邪魔なんだろ。
別に俺も必要としてねぇし」って
言いたくもなりますよ。

そういう複雑な関係の母親が
何故か、大事な最終訓練の直前に
何故か、事故で危篤ですって。

親の死に目か、大事な訓練か
二者択一を迫られた宙ですが
「最後までやり遂げたい」と訓練に残り
そして、それが結果として
皆の士気を上げたことは確かです。

「お母さんの大事な時に、訓練を優先した宙くんの気持ちを無駄にしてはいけない」と
いうことでしょうが
馬場以外の、宙の生い立ちを知らない皆は
そう思って当然でしょう。

ですが、宙にとっては
「母にさえ捨てられた自分が取るべき道」として
最終訓練にクリアすることを選んだのは
特別、苦渋の決断ではなく
ごく自然だったと思うのですね。

言わば、皆のモチベーションを上げたのは
「親子はこうあるべき」を前提とした
単なる勘違いなのです。

ここに引っ掛かっちゃったら
「感動の」母子対面を見ても、モヤッたまま。
都合よく事故で重体、都合よく持ち直す
都合よく再会、都合よく和解。

第2部に向けて
宙の過去は大精算したかったのかな?と
疑いたくもなります。

私はむしろ、この家族問題を引っ張って
最終回、晴れて一人前の自衛官になった宙が
災害か何かで進退窮まった母たちに
救助現場で偶然再会(このドラマ、偶然が好きだから笑)
……なぁ〜んてのを想像してたんですけどねぇ。

積年のわだかまり
なんか、あっさり解決しちゃったなぁ、と
拍子抜け。

この不幸な生い立ちが、宙のキャラクターを
重層的にしていたのは確かだし
町田くんもかなり頑張って表現していたので

暗さを秘めた宙くんは、これでさようなら
第2部からは新生・国生宙だぜ!だとしたら
せっかくの好演が勿体ない。

そして「感動の適量」の点から言うと
私たちが知り得なかった
自衛官という人たちの実態やら
訓練の様子やらを全面に出してくれれば
それでもう充分、心打たれるものになると
思うのですね。

この最終訓練で皆の心が一つになったのは
一朝一夕で出来上がったものではなく
出会いからここまで、反発したり打ち解けたり
色々を経てきた過程をしっかり描いてきたからこそ
説得力を持って「感動」させてくれたのです。

遂に修了式を迎え
自衛官の制服に見を包んだ彼らの誇らしげな姿に
自然と目が潤み

八女中隊長から一人一人ヘ掛けられた言葉に
「修了式終わったらボコボコにしようぜ」なんて言ってた奴らが
心から感謝の気持ちを抱くシーンで

わたくし、不覚にもティッシュを目頭に
当ててしまいましたよ。
これぞ「感動」ですな。




ところで、ところで
宙くんの片思いの件ですが(笑)

「連絡先を教えてほしい」と
清水の舞台から飛び降りる覚悟の宙に
桜間教官「この先、業務で困ったら
いつでも相談しなさい」とは、これ如何に?

「男、いるんすか?」に対して
「いないわよ」って答えたのは
宙の気持ちを分かってるってことじゃ
なかったんすか?

好意を持ってそうで、肝心な時は上司の顔。
これは、冒頭、酔っぱらい丸山のモノマネ
「男ども、ひれ伏しなさい」が
大当たりのようですね。

奇しくも(予想どおり?)配属先では
二人は上司と部下。
さっきの感動の、舌の根の乾かぬうちに
こんな不謹慎なこと言うのもなんですけど

クールビューティーとマッチョイケメンで
見ようによってはSMもどきの駆け引きが
繰り広げられるのか?と

それはそれで
八女のおっさんじゃないけど
「フゥーーッ!!」な展開が楽しみな
第2部です。

八女のおっさん 妻子持ち……ですよね〜

『テッパチ』第4話、抜けてしまいました。
ごめんなさい。

なんか、視聴率がダダ下がりだという噂を耳にすると
心が折れてしまいますねぇ。
そのせいか、イイところより粗ばっかり見えて来ちゃうのは
私の心が弱いからでしょう。

ドラマだから、選りすぐりの崖っぷちたちを
ぶち込んで
皆の成長するさまを御覧いただく趣旨は
分かるんです。

「あざとい」という声も聞かれる
男性的肉体美の大安売りも
個人的には大歓迎なのです。

が、やはり個々の抱える問題を
友情と熱意と偶然で一気に解決は
都合良すぎる気がしないでもない。

サバゲーで培った射撃の腕前だけを頼りに
自衛官を志した丸山が
宙に追い越されただけで自信が揺らぎ
昔の同僚のヘッドハンティングに乗せられ
危うく虎の子の500万を騙し取られそうになる
という件も然り。

何故バレたか。
その同僚が詐欺仲間と電話で話してるのを
丸山が偶然、聞いちゃったから。

荒井の父親が面会に来た要件が
間違って独り歩きしたのも
盗み聞きしようとした小倉が
偶然、途中から聞きかじったから。

そして、最たる偶然は
同じ時間に宙と桜間教官がランニングし
何度も曲がり角でぶつかる、という偶然。

いや、偶然も重なると必然になるって言うから
この二人はやっぱりそういう運命なのか!
なのに、私は何故宙を失恋させようとしたのか(笑)

安心してください。
八女のおっさん、既婚者でした(笑)

前置き長くなりました。第5話ネタバレいたします。







大体、超優秀な自衛官である桜間教官が
男一人にぶつかったくらいで
あんなに派手に転びますかねぇ(笑)

しかも、クラクション鳴らして迫り来る車を
轢かれそうになるまで
突っ立ったまま待ってるんですよ。
(戦場だったら真っ先に御陀仏ですぞ)

そこを宙に抱きすくめられて助かる
っていう流れにしたくてなんだろうけど
それが通用するのは
少なくとも「自衛官じゃない女」でしょ。

強いしっかりした女性が、ふと見せるか弱さ
ってことなのかな?
訓練の時の隙の無い様子とは打って変わった
「オンナの顔」を、よりによって宙にしか
見せてないのがミソなのか?

せっかくの桜間教官の毅然とした佇まいが
台無しのような気がするのですが。

この第5話は、特に「女性」がテーマでしたね。

男女合同訓練に浮き立つ男ども。
男ばっかりの生活は
容易に生殖本能に火をつけるんですねぇ
わっかりやすいのう(笑)

自衛隊内での恋愛は許されてるのか」という
宙の突拍子も無い質問から
なーんと、八女のおっさん職場大恋愛カミングアウトに至り

そこから、結婚・出産後の女性自衛官
充実した身の振り方が
自衛隊にはちゃんと用意されている話になり
しっかり自衛隊PRにもなってて良かったですね。

しかし、その「妊娠・出産」の言葉に
微妙な反応をした女性自衛官が……

訓練生になる前に付き合ってた元カレの子を
妊娠した石崎でした。
どうやら「自衛官になる」という目標が出来て
試験を受け、合格し、彼と別れて
訓練に励んでいた矢先に妊娠が判明したそうで。

うーん、ここがよく分からない。
国のために働きたい=彼と別れなくちゃ
って、なります?

試験受けて、合格してから別れたってところが
引っ掛かるんですよ。
ちゃんと目処が立ってから別れるって
ズルくないですか?

「恋愛なんかよりも大事な夢を見つけた」
「彼にも恋にも未練なんてない」
「頭の中は一人前の自衛官になることだけ」
ああ、それなのに……なんで?

なんでもへったくれも無いでしょうが。
一時の感情に流されて避妊しなかったツケが
回って来ただけですがな。

石崎にほのかに恋心を抱いていた
小説家志望の小倉が、ちょうど腹壊して
隣のベッドで寝ていて
その話を聴いてしまうってのも、また偶然。

不純な動機で入隊した小倉を軽蔑していた石崎は
彼の「めでたいこと」発言にブチ切れ
「なんで女だけがこういうことで悩まなきゃいけないの?」と不満を吐き散らすのですが

私には八つ当たりにしか思えません。

かの大駄作『SUPER RICH』でも鮫島が
似たようなことカマしてましたよね。

女性にとっての仕事・結婚・出産は
人生の一大事、且つそれらの両立も一大事
なかなか難儀なテーマであることは確かです。

が、その大きなテーマをぶち上げることで
個人の負の事情から目を逸らせるのは
ズルいと思うのです。
主語を大きく言われると
相手は反論しづらくなるからです。

石崎の相棒にまで
「無神経だ。妊娠が女の幸せだと決めつけるな」などと
散々な言われようの小倉がちょっと可哀想。

レイプされたのなら、その理屈も通りますが
合意の末の妊娠に「幸せとは限らない」なんて
無責任過ぎます。

このやり取りを、これまた「偶然に」
桜間教官が聞いてしまい
自衛隊が如何に妊婦にいたれりつくせりな所か石崎に話し
「仕事も出産も手放す必要が無い」ことを強調します。

なんだかんだで、しっかりPRしてますな。

結局、まだ訓練生の自分は半人前だから
国もお腹の子も両方は守れない
ということで
石崎は自衛官を諦めることになりました。




ところで、この件にかこつけて
桜間教官に「今、男、いるんすか?」は
いきなり過ぎんか、宙よ。

いや、こういう強引な物言いが
功を奏するのか?

一目惚れした女性自衛官を落とした八女のおっさんも
きっとこんな感じだったんだろうなぁ。

しかしねぇ、それは結局
男前だから上手くいくんじゃねーの?
と、今回はひねくれております。

八女のおっさんがマイホームパパって
ガッカリだよ(笑)

暑さもトラウマも荒療治?!

前回、1班の謎の男・武藤の過去が
どうも「父親殺し」らしい、ヒェ~!
で、ビールどころじゃないぞと
若干、納涼気分だったわけですが

今回は、その詳細を知ることになり
そこからの宙をはじめとする1班メンバーの
熱い暑い?友情大爆発という

観ても書いても汗が噴き出す
真夏の夜を更に熱帯夜にしてくれた
地獄の回だったのでございます。

ネタバレいたします。






ただでさえ炎天下での訓練はキツイでしょうに
鬱陶しい迷彩服にヘルメットで
ランニングに腕立て伏せですよ。

観てる方としては、一体何の拷問を受けているんだろう
ってくらいの暑苦しさ。
自衛官の方たちには申し訳ないけど
開始早々グッタリです。

汗びっしょりの後は、恒例のシャワー………
のはずが、何故か脱衣所で脱ぎつつ喋り倒すだけ。

上半身裸で宙と荒井が言い争っている内容がまた
どっちが体力あるかという自慢話比べ。
前回は中2男子でしたけど
今回は更に幼く小4男子並みの子供っぽさ。

コレを可愛いと思うか
汗臭い上にやかましいって勘弁してよ
と辟易するか、なんですよねぇ。

私ですか?
この暑い季節は、裸もいいけど
できればそれに水ぶっ掛けたいんですよね。

よく、暑い時は敢えて熱い物を食べて
もっと汗かいた方がサッパリするんだ
なんて言いますけど

とにかく、くだらないこと喋ってないで
その汗ベタベタを先になんとかしてくれぇ派としては
いくらカッコいい裸でも、うへぇ、でしたね。

と、まぁそこで
話題の武藤の背中バッサリ傷を見て
一堂驚愕。あのヒェ~が蘇るというわけです。

明くる日の射撃訓練(実弾はさすがに無し)で
ちょいブラック教官に罵声を浴びた武藤は
幼い頃の父親からのDVがフラッシュバックし
我を失って暴れてしまいました。

八女を敵視している大隊長
鬼の首取ったみたいに
「ホラ、言わんこっちゃない」でしたが
桜間教官の助け舟で処分保留になります。

その後、一人黙々と筋トレする八女に
宙と優等生馬場が武藤の過去を尋ねて
凄まじいDVの果てに父親を殺したのではなく
未遂で終わった真相を知ります。

このシーン、内容が内容だけに
宙のセリフじゃないけど「空気がクソ重てぇ」のですが

八女の北村一輝の筋肉モリモリに目を奪われて
そんなに深刻な気持ちにならなかったのは
ちょっと不謹慎でしたね、反省。
(筋肉に目がないもので笑)

私と同じく(?)重い空気が苦手な宙は
いつもの喫煙所で一服し
その帰り道、人影を察知して
メッチャ、ビビります。ヒャーって(笑)
(宙の弱点、見っけ)

その人影は、フラッシュバックで自信を無くし
逃亡を図った武藤でした。
逃亡の連帯責任を負わされちゃ堪らんと
格闘の末、頭突き食らって宙、鼻血が。

武藤の口から事の成り行きを
重い重い話を聴く宙ですが
ティッシュ姿のちょっとトボけた風貌と

父親を本気で殺そうとした自分でも
人の役に立てるのではないかと自衛官を志望した武藤に
「生きる希望を見つけようとしてるだけ
俺よりマシだ」と飄々と自虐するところ
スゴく良かったですね。

馬場のように真正面から受け止めるのも
それはそれで大事かもしれませんが
この宙のように、深刻に考えすぎないのも
「もっと軽く生きてみてもいいんじゃないか」と、新たなアプローチになるような気がするのです。

ここまでは良かったのよ、ここまでは。

訓練中に、またフラッシュバックで暴れてしまうかもしれない。
自衛官になる夢を諦めようとしている武藤を
宙が「ここに残りたいなら鍛えてやる」という方法が

コレ、大丈夫か?なヤバさが………

1班メンバーから罵声を浴び続け
1時間耐えたら合格、という荒唐無稽なもの。

本気で鍛えるから、お前も本気で耐えろって
言うくらいだから
最後の方は双方泣きそうな悲壮感。

うーん、理屈は分かるよ、分かるけど
精神医学的にはどうなんだい?
ドラマだから、最後は丸く収まるんですけど
(八女発案のサプライズ武藤ハッピーバースデイまで飛び出す)

精神的問題の解決案としては
かなり乱暴ではないかしら?
宙はその辺りド素人なのですよ。
安易に成功例として扱うのは問題じゃないかな?

という懸念が残りました。
コンプライアンスがうるさい昨今
然るべきところから苦情が来ないか心配です。




話変わって、宙のロマンスの行方ですが
惚れた女の前では緊張ガチガチの宙が
可愛いんだよなぁ。

銃の弾倉の装填が上手くできなくて
桜間教官に「落ち着きなさい」と、手を握られ
自分を取り戻す宙。

落ち着いてみたら、手こずってた装填も
アラ、簡単。
こんなこともできないほど上ずってたんかい!
男の純情がほとばしってました。

が、わたくしの
あくまで私的見解ですが

桜間教官、実は八女中隊長を想っているのでは?!
八女がエリート部隊から外れた経緯に
やけに詳しいんですよ。
私は貴方のことすべて分かってますのよって
感じが、ヒシヒシと。

さあて、我らが宙くんの片思いは
成就するのでしょうか。

八女中隊長の男の色気に勝てるかな?

ココロのスキマ お埋めします

この前の「スキマ」はピンク色でしたが
今回のは「人生に絶望して出来た心の穴」
とでも申しましょうか。

覗き込んだら最後、飲み込まれて人生終了してしまいそうな
真っ黒くろすけブラックホールです。

我らが町田くん主演『テッパチ!』第2回は
訓練生第1班諸君のそれぞれの事情が明かされ
まぁ、皆さんそこそこの崖っぷち人生でした。

ネタバレいたします。






前回の「逃げるのか」で挑発ついでに
因縁の荒井と体力検定で勝負してみろ、と
ナイスな提案で宙を思い留まらせた八女教官。

宙くんってのはアレですね。
自分の行く道は自分で決める風にイキってますが
結構、人の言うことに一々反応してますよね。

コレを受けなきゃ男がすたる的なスイッチが
発動しやすいのか
八女教官の提案も、後の荒井の「負けた方が辞める」というオマケ提案も
上等だよと受けちゃう無鉄砲ぶり。

小説家志望の小倉くんじゃないけど
根拠のない無鉄砲は、ただの「単細胞」。
今まで、散々痛い目に会っているのに
それでもそういう生き方しかできないところが
宙の弱点でもあり、魅力でもあります。

来たる体力検定に向けて、バチバチで張り合う
宙と荒井は、ほとんど中2男子ですね(笑)

シャバでツッパってた頃は
「ナイフみたいに尖っては
触るものみな傷つけた」ような荒井。
が、宙と競い合っている時にふと見せる
「負けないゾ!」な表情が可愛いのよ。

で、目一杯汗かいたら
皆さんお待ちかねのシャワーシーンになだれ込むという
子供っぽい男→セクシーな大人の男の畳みかけでノックアウトですわ。
これは良い仕掛けです(笑)

  (余談ですが、町田くんの仕上がりは
   見事ですねぇ。
   黒沢くんのこの身体を見たら
   白玉肌の安達くんも思わず
   ピンク色になっちゃうなぁ……などと
   つい不埒なことを考えてしまいます)

だがしかし!
今回のラブラインは紅一点の桜間教官です。
彼女に対する宙の態度も、まるで
美人教師にほのかに憧れる中2男子で
可愛いやらもどかしいやら。

「勝っても辞めてやるよ。俺は必要ないんだろ?」と
真っ直ぐ見据えてくる宙から
視線をスッと外した桜間教官。
ハイ、恋の予感の一丁上がり!

一方、1班の学級委員長的存在の馬場くんから
宙と荒井の密約を聞いた八女教官が
班員それぞれが抱える事情や思いを
宙に語り出すわけですが

揃いも揃って、のっぴきならない崖っぷち。
そこへ宙くん同様、八女が声を掛けて
今に至るというわけですね。

まぁ、ドラマだから、そんなにそんなに
何でお誂え向きな人材に偶然出会えるのか?
には目を瞑りましょう(笑)

ただ、声を掛けて来たのが
自衛隊だったから良かったようなものの
最悪、怪しげな宗教や儲け話にも
安々と引っ掛かってしまいそうなほど
皆さん、心がへし折られた状態だったのです。
 
彼らに救いの手を差し伸べた
仏様のような八女教官が
「ココロのスキマをお埋めします」と
寄って来る喪黒福造に、その時一瞬見えたのは
果たして、私の目の錯覚だったのか?

さて、体力検定で荒井に負けた宙。
部屋でうなだれる彼に
訓練ブーツを磨きながら
「自分で決めた道だから、途中で投げ出したりしない」と
生真面目で不器用な自分をさらけ出して
淡々と語る馬場くん。

この「自分で決めた」がキーワードなんですね。
桜間教官にも言われました.
「あなたはどうしたいの?」と。

実は宙くん、自分の言動をすべて
「○○がそう言ったから」「△△がそうしたから」と
人のせいにしてしまうクセがあるんですね。

今回の自衛隊辞める辞めないも
根本的な「自分自身は辞めたいのか?」が
さっぱり見えて来ないのです。

失意のまま、屋外の喫煙所でふかしていたら
今度は因縁の相手、荒井が一服しにやって来ます。

やたら禁煙、分煙と、喫煙者に厳しい世情で
ドラマでも喫煙シーンは
珍しい部類になっていますが
この行き場のない男二人の
紫煙くゆらせながらポツポツ語るシーンは
見事でしたね。

反発し合ってた時から
この二人は何かを切っ掛けに心が結び付くだろうな、とは思ってました。
こういう熱血話には有りがちな流れなので。

過去の苦い思い出のシーンを挟み込んで
少しずつ距離が縮まる様子がとても自然で
良かったと思います。
いいヤツじゃないか、荒井くん!

翌朝、ランニング中に偶然出会った桜間教官から言われた
「仲間と家族のようになれたら
一人前の自衛官になれるかもよ」。

そして、かつて八女教官が言った
「お互いをつぶし合うな。支え合ってくれ」
が甦り
宙くん、とうとう自衛官になる覚悟を決めたようです。

でも、その気持ちの現れた言葉は
「しょうがねぇなーー」(笑)
あんたらがそんなに言うからだぞ
しょうがねぇなーーとは、宙くんらしいです。



さ〜て、これで大団円かと思ったら
そうは問屋が卸さないのがテレビドラマです。
先程の「八女=喪黒福造」疑惑がムクムクと。

高卒叩き上げの八女中隊長
今回一人も脱落させずに卒業させれば
希望の職務に復帰できるという密約を
上司と交わしていたのです。

人生ドン底の彼らを
ただの善意で救ったわけじゃなかった……
という裏事情が明らかとなったわけですね。

そうなると、敢えて他に行き場が無い
崖っぷちだけを集めた意図も見えてきて
八女の隠れた顔が及ぼす今後の影響が
気になります。

そして、最後の最後まで謎の人物だった
班員・武藤の過去が
宙や他の皆の黒歴史の比ではない
「父親殺し」という真っ暗闇だった衝撃。

やっと第1班が軌道に乗るかと思いきや
新たな波乱の幕開けとなってしまいました。

おかげで、懸念だったガンマニアの影が
薄まりはしましたが
もっと真っ黒な人が控えてたとはなぁ……

自衛隊のあの手この手

遂に始まりました!
我らが町田くん、全国放送初の主演ドラマ
『テッパチ!』
バーテンダーのは一部地域だけでしたからね)

高校時代はラグビー部のエースだったものの
協調性の無さが招くスタンドプレーのせいで
脚を故障し、その後日雇いで生計を立てる
どこか投げやりな国生宙(町田啓太)の
人生再建物語 in 自衛隊……というドラマ。

ドン底から立ち上がる熱血感動話すら
珍しい昨今、舞台がよりによって「自衛隊
ですからね。

警察物なら、自前のウソパトカーでお茶濁せるけど
戦車はさすがに調達できぬというわけで(?)
天下の防衛省全面協力だそうです。

ネタバレいたします。






建設現場での身勝手さ
貰った給料をいきなりパチンコに突っ込む
行き当たりばったりの暮らしぶり
道端での暴力沙汰で日雇いも解雇され
挙げ句の果てに、家賃滞納で住む所も失う
という、いやはや相当なクズっぷり……

なのですが、この宙くん
どこか冷めてるんですよね。

滞納分のお金を,別れて暮らす母親に融通してもらおうとしても
新しい家庭で幸せそうな様子を見て
敢えて声を掛けずに漫喫暮らしを選ぶ宙。

高校生の時に、母親から妊娠と再婚を打ち明けられた時点で
彼は全てを諦めてしまったのかもしれない。 

このエピソードは、ともすれば煙たがられる
身勝手で投げやりな宙の振る舞いに
説得力を生み
ただの「イヤな奴」ではない
人間的厚みを感じさせてくれます。

最近、某就活情報サイトが
「底辺職業ランキング」なる
大きなお世話格付けを発表して炎上しましたが
宙の仕事はまさにそれです。

でも、連絡の齟齬でホテルでの同窓会に
作業着のニッカポッカ姿で行ってしまっても
逃げ帰らず、むしろ堂々と現れ
当時の仲間に皮肉を言われても
ムキになって突っかかることもしない。

しかし、偶然通り掛かった喧嘩沙汰に
飲んでいた酎ハイを落とされると
溜まった鬱憤を吐き出すように
怒りを爆発させる。

そして、警察に身柄を引き取りに来てくれた
勤め先の現場監督に解雇を言い渡された瞬間
茫然からすぐにおちゃらけて平気を装う……

という具合に、表情や態度は目まぐるしく変わるのですが
一貫して、心の奥にあるドス黒い澱みが伝わる
心底ヤサグれた閉塞感を持ちつつ
それを受け入れてしまっている「諦め」が
敢えて自分をもっと悪い状況に追い込んでいる
ようにも見えるのです。

この自暴自棄のどうにもならない男の顔。
町田くん、いいですよ。
人間、ドン底の向こう側を見ると
こんなふうになっちゃうんだなぁ。

で、その喧嘩沙汰あたりから
目を付けていたらしい男・八女(北村一輝)が
一文無しの宙に「自衛隊入らんか?」と
特大ステーキを餌に声を掛ける
というわけですね。

国生さゆりか、懐かしいなぁ、おニャン子
で、この男の年齢が想像つきますな(笑)
が、おっさんはおっさんでも、さすが自衛隊
Tシャツの袖から覗く二の腕の筋肉たるや
なかなかのマッチョ。

ヤサグレ無精髭の町田啓太と
筋骨隆々の渋い北村一輝のツーショットなんて
夢のようです(笑)

スカウトされても、ステーキで釣られても 
一貫して「自衛官になると決めたわけじゃねぇ!」の宙でしたが
衣食住完備+給料の魅力に抗えず
しっかり合格して、取り敢えず自衛官候補生となって訓練に勤しみます。

まるで部活の合宿のような
男8人の共同生活が始まるわけですが
真に「立派な自衛官になるのだ!」は
その中の1人だけ。

冒頭、防衛省のお偉いさんたちが
「若者の心に響くキャッチコピー」で
自衛官の担い手を募集しようと検討してましたが
実際、集まって来るのは
様々な動機を持った人たちなのです。

ここらあたりの事情を赤裸々に明かしているところに
防衛省の脱・お役所気質的な新しさを
感じましたね。

「食うに困って」とか「小説のネタに」なんて理由でも
受け入れちゃう自衛隊って、懐深いでしょ
みたいな?

シャバにいた時の例の喧嘩の相手と
偶然一緒の班になり
案の定、そいつと喧嘩やらかして
ほのかに憧れてた女性教官に
「協調性の無い人間は要らない」と言われ
自衛官の職も投げ出そうとする宙。

その彼を「逃げるのか」と挑発しつつも
エリートではない自分でもお前でも
ここは決して見限ったりしない、と
宙のわだかまりの根源をすくい取るような言葉で諭す八女教官。

表向き「国防の担い手となりたい」人で
固めているように見せたいであろう自衛隊
が、様々な事情を抱えて自衛官になる人がいる現実から目を背けることはできません。

「どんな人も見放さない」
これはそのまま「どんな人も守る自衛隊
というテーマに繋がるのだと思います。

あと、もう一つ
「エッ!防衛省、やるじゃん!」と思った点。
厳しい訓練を終えて、宙たちが浴びるシャワーのシーンですね(笑)

水も滴るイイ男が、文字通り水滴らせる裸体を
惜しげもなく見せてくれるわけで
また、それを舐めるように撮るもんだから
いやぁ、眼福、眼福(笑)

ジェンダーフリーが叫ばれる昨今、
女が男のシャワーシーンを愛でたって
良いではないか!なのでありますよ。

町田くんが鍛えた肉体を披露するとは
思ってましたが
防衛省の検閲が入っているであろうドラマで
このエロ目線シーンを入れて来るなんて
あら、ビックリ!でした。

それから、今回のロマンスの相手が
先の叱責した女性教官(白石麻衣)だそうで。

映画『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』の時も
主人公の恋人役だったのですが
童顔の千葉雄大に対し、古風な顔立ちの彼女が
なんともアンバランスで
しっくり来なかったのです。

ところが今回、美人エリート自衛官という
きっちりした役が、典型的和風美人の彼女に
ピッタリなんですねぇ。

年齢の割にフワフワした町田くんと
美男美女コンビで、今後の恋愛模様
楽しみです。




ただ一つの懸念は
この第1回放送直後に起きた
元首相暗殺事件の犯人が元自衛官ということですね。

しかも兇器が手製の銃で
奇しくも宙の同僚にガンマニアの青年がいて
「銃を撃ちたくて」自衛隊に入ったって
言っちゃってるもんだから
第2回目以降、この人をどう扱うんだろうと
心配してます。

ヤバイよ、ヤバイよ!

自由のようで自由でない ベンベン♫

驚きました。
普段寄り付かないチャンネル、Eテレ
「100分de名著 安部公房砂の女”」の
朗読者が、我らが町田くんという意外性。
 
プロデューサーの方のインタビューによると
「土方の演技が良かったから」
「透明感のある声が、物語との違和感を生んで不条理が際立つ」のだそうで

正直、買いかぶり過ぎじゃねぇの?
と、不安な気持ちで観てみました。

実は、私、朗読に携わって幾星霜。
NHK日本語センターで研修も受けたことがございまして
この度、町田くんが朗読するとなると
居ても立ってもいられない心境なのでした。

番組自体も初めて見たものですから
どういう構成かも知らず
全編、彼の朗読だったらどうしよう……
だったのですが

安心してください。違いましたよ。
朗読は断片的で
メインは寧ろ、講師のヤマザキマリさんと
司会の伊集院光さんとの含蓄ある掛け合いですね。

ヤマザキマリさんと言えば
あの『テルマエ・ロマエ』の作者さん。

油絵で身を立てようと
弱冠17歳で、単身イタリアに渡り
極貧の中で右往左往していたドン底時代に
砂の女(イタリア語版)』に出会って
多大な影響を受けたのだそうです。

片や、伊集院光さんは
「『砂の器』とゴッチャになってる」という
全くの『砂の女』初心者。

私も原作は読んでないのですが
作者・安部公房自ら脚色したという映画は
昔、観たことがあります。

あるのですが、白黒の映像と全編砂まみれと
女優・岸田今日子さんの不気味さに
ホラー映画大好きな私が
言いしれぬ怖気に襲われ、リタイアしたという
私にとっては、いつかリベンジしなきゃならない作品でもあるのです。

というか、ヤマザキさんのような
途轍もないドン底を経験してない当時の私は
「自分にとっての自由とは?」なんて
これっぽっちも考えてないわけで

そんな能天気が理解できるような
浅い内容ではなかったんですよね。

ところが、まぁそれなりに苦労を経験し
町田くんのお陰で(?)この番組に出会い
ヤマザキさんの実体験に基づいた解説と
それに反応する伊集院さんの
これまた実体験から導かれる例え話で

あの時のちんぷんかんぷんが嘘のように
「自由」の紐がスルスルと解けていく感覚を
味わうことができました。

解けたからと言って
「自由とはこういうものである!」と
単純明快にならないところが
この作品の醍醐味なんですけどね。

私は『プレバト』という番組が大好きで
特に俳句の夏井先生の名添削に唸らされてますが
まさに先生の「人に伝わる句を作るためには
実体験を書きなさい」を
この『100分de名著』でも実感いたしました。

ヤマザキさんと伊集院さんのお話は
小難しい用語など一切無い
すべて実体験から得た、血の通ったもの。

それら一つ一つがストンと胸の奥に落ちて
難解と思われた『砂の女』が
整然と見えて来るのですから、あら不思議。

訳の分からない不気味さに「ダメだ、こりゃ」と匙を投げてしまったあの時に
この番組と出会いたかったものです。

で、この番組に於ける町田くんの朗読は
どう捉えたかというと……
多分、プロの役者さんの朗読って
私のような素人のものとは別なんでしょうね。

素人はあくまでも黒子に徹して
作品の世界観を損なわないことを第一にしますが
役者さんの場合「その人が表現する」ことに
意味が有る。

そして、その番組の趣旨を損ねない
その番組に相応しいものであることが求められるのでしょう。

そういう点で、先のプロデューサーさんの言
「透明感のある声」がピッタリはまるのです。
ヤマザキさんと伊集院さんのお話を全然邪魔しない
それこそ透明な水がサラサラ流れていく心地よさ。

純粋に「朗読」として聞けば
色々と難は有るのでしょうが
番組が役者に求めている役割は
『イエナガ』同様、果たしているわけですね。

恐るべし、町田啓太(笑)
(ただし、土方の演技云々は納得してないけどね!)
 



あ、「自由」について考えるついでに
只今、ネットで上を下への大騒ぎになっている
口を開けば「自由、自由」のやんごとない方々へ
ついつい思いが至ってしまうわけですが

父さんも母さんも、NYへ高飛びした姉さんも
「私は籠の鳥」の妹さんも
頑として裏口入学と盗作を認めない弟さんも

一回、読んでみ、『砂の女』。
自分たちが思い描いている「自由」が
なんぼのもんか。
わかるかなぁ……わかんねぇだろうなぁ(笑)