それはどうかな

心に引っ掛かったことを書き留めます

大豆田とわ子はカレーパンが食べたかっただけなのである

【御注意】ドラマの内容に大いに触れますので
未見の方はそれなりにご対処をお願いいたします。     


まだ4月ですが、まだ1話だけですが
これはもしかして
今年の最高傑作かもしれません。 
(早ぇな、オイ)
火曜夜9時「大豆田とわ子と三人の元夫」。

「新感覚ロマンティックコメディ」と銘打ってますが、テレビドラマなのに映画のような
はたまた舞台のような、時にコントのような
新鮮で不思議で確かな見応えを感じました。

男女の惚れた腫れたに興味が無い私が
何故このドラマにチャンネルを合わせたかというと
只単に「おおまめだ」なのか「だいずだ」なのか、どっち?だけだったのです。
(正解は「おおまめだ」でした)

それが、あぁた
歩きながら靴の中の小石を出そうとする
すっとぼけた松たか子
無声映画の弁士のように「〜する大豆田とわ子」「〜な大豆田とわ子」と連呼する
伊藤沙莉の語りで目が離せなくなりました。

この冒頭だけで、大豆田とわ子という人間への興味がググーッといや増して来ます。

ドラマの第1話って、大体登場人物の人となりとか人間関係の把握に費やされますが
このドラマには何のストレスもありません。

ナレーションで人物紹介する説明臭さを
一切感じさせない伊藤沙莉。お見事です。

そして大豆田とわ子演ずる松たか子……あ、逆だ
もうそれくらい、そのものなのですよ。

小さいが堅実な会社の社長で、そこそこ美人。
なのに、ちょっと抜けてて損ばかりしている
バツ3の子持ちオバサンという難役を
何の気負いも感じさせず、軽やかに見せます。

何が悲しくて、3度も離婚したのか。
「1人でも大丈夫だけど、誰かに大事にされたい」を追い求めているから。
とわ子の友人が言う「離婚は自分に嘘つかなかった証拠」は多分、真理でしょう。

バツ3ともなると、達観の境地にある人の余裕まで感じさせるとわ子ですが
船長の制服姿で馴れ馴れしく接して来る
無駄にイケメンな男(斎藤 工!)の胡散臭さに
全く無防備という抜け作ぶりも見せ
こういう弱点故の、元夫たちの未練タラタラかなとも思えるのです。

経済的に自立し、しっかり子育てする強い女。
とわ子の亡き母が言うところの「1人でも大丈夫だから大事にされない」女。
カレーパンなどという庶民の食べ物を差し上げるのは却って失礼、と部下たちが遠慮してしまう女。

とわ子という器の立派な外観とは裏腹に
日々のちょっとしたトラブルに右往左往し
ロマンスの兆しにトキメキを隠せず
毎毎堂のカレーパンが食べたいと言い出せない
悶々とした思いを飲み込む現実。

特にそのカレーパン。
大方配って、最後余った1個をどうしようかの段階で、平社員の男にかっ攫われるのです。
言うに事欠いて「じゃ、僕食べますよ。カレーパン好きじゃないけど」とはなんやねん!

ちょっといいカレーパンを、皆と一緒に食べたかっただけなのに
結局「なんか、友達が勝手に応募しちゃって
受かっちゃいました」みたいな奴に
シレッと持ってかれるんですよね。

もう人生あるあるが凝縮されたようなシーンで
とわ子に一気に感情移入してしまいました。

そしてなんだかんだ強がっても
お風呂でご機嫌な歌を響かせたり
松たか子の歌唱ですから、もう絶品です)
自然と心の内を吐露してしまう相手は
最初の夫だけなんですね。(今のところは)
この時のとわ子が、実にチャーミング。

それと同時に、母親の葬式の帰りに目撃した
「布団がフッ飛んだ」話を淡々と語る姿に
悲しみの中の可笑しみ、可笑しみの中の悲しみ
(上手く表現できなくてすみません)
みたいなものを感じ、下手な泣き落としよりも深く、母の死に対するとわ子の気持ちが沁みてきました。

四十九日法要を終え、桜散る中
喪服姿のとわ子と元夫たちが
並んでブランコを漕ぐシーンの美しさたるや……

3人の元夫たちも絶妙な掛け合いを見せ
一人一人について語っていたら
誰かさんの28枚もの弁明書並に長くなるので
このくらいにします。

「チェリまほ」で落ち込んでた最中の一条の光
大豆田とわ子。
次回が待ち遠しいです!



【追記】とわ子がイヤイヤ元夫たちと会わなければならない破目となった
パスワード関連のあの不思議な質問項目
「初めて飼ったペットの名前は?」に
このドラマごと、見事なツッコミ入れてくれました。やられました。脱帽です。