それはどうかな

心に引っ掛かったことを書き留めます

泣くな 東海林 気の済むまで泣け 優

回を追うごとにボロクソ度が右肩上がり
それが SUPER RICH のはず。

しかし今回第9話は
まるで初心にかえったように
見応えある内容だったのです。
一体どうしちゃったんでしょう。
(ネタバレ御注意)



遡ったり早送りしたりと
時の流れをいじくるのは相変わらずですが
今回の特筆すべき点は何と言っても
「いつになく丁寧に描いた」
これに尽きると思います。


仕事の面では、とうとう念願かなって
前のオフィスを取り戻し
離れていた元社員も戻って来て
いよいよ株式上場しようかという
アゲアゲのスリースターブックスに。

しかし、好事魔多し。
衛に病魔が忍びより、それを隠すためのリモートワークで表舞台から退いたため
急遽、ナンバー2の白羽の矢が優に立ちます。

期待に応えようと投資家廻りを頑張るのですが
大金が掛かる話に最高経営責任者の不在は響き
思うように行きません。

もがく優に、決定的な打撃が襲います。

コミケでずっと前から東海林が目を付けていた
玄人裸足の作家を、やっと口説き落とし
イベント用の冊子(凝りに凝った作り)を
優の実家の印刷会社が請け負うことに……

この結果が凶も凶、大凶でした。
納期は守れないわ、発注の1/10しかできてないわの惨憺たる結果
上場に影響する訴訟は何とか免れましたが
将来有望な作家に、スリースターブックスは
三行半を叩きつけられてしまったのです。

しかもその前に、父親が不用意に連帯保証人となった借金1,000万円の存在を知らされていたので、優の怒りは頂点に達しました。

あの、母親からの涙の無心200万円を
理由も聞かず、複数のバイトをこなして
清算した優が

婚姻届を前にして、衛に「私たち家族には
すっごく優しい、いい子なんです」と
母親が宣った、春野家自慢の長男・優が

土下座して詫びる父に
(奇しくも、優が衛に土下座した場所)
「土下座なんて1円にもならない」と
鬼の形相で冷たく言い放ったのです。

このシーンにはシビレましたね。

会社の顔として期待に応えなければならない
そして、働く社員の生活を背負っているという「責任」を持つと
人はこうも顔付きが変わり、言動が変わり
何と言っても「仕事に対する姿勢」が変わるのかと。

衛に土下座した時の
「ごめんなさい、でもこうこうこういう理由があったのだから仕方なかった」が
通らない世界を、優本人が体現したのです。

もうこんな赤楚くん見たことないってくらい
静かな怒りを湛えた表情に
あぁ、辛抱して見続けた甲斐あったわぁと
心につかえたものが落ちていくような心地でした。

そしてやり場のない怒りと傷心で
ボロボロのまま帰宅した優に
さらなる追い打ちが。

優にさえ秘密にしていた衛の病気を
偶然知った空は、病身の衛をひたすら支えていたのですが
運悪く衛と一緒のところを優と鉢合わせしてしまったのです。

ボロボロ+嫉妬の優に問い詰められ
とうとう病気を告白する衛が
何故今まで優に黙っていたのか、その理由に
年の差夫婦(しかも女性の方が上)の
ブチ当たる壁を思い知らされました。

鮫島が赤ん坊を連れて職場に来て以来
「優が子供を欲しがっている」と
察知した衛は、自分の年齢と発病を鑑み
なかなか言い出せなかった、と。

このドラマの、やたら社会問題に手ぇ出しては知ったような口で結論づける流れが
鼻について堪らなかったのですが
コレは結構ズシンと来ましたね。

それというのも演者の二人の上手さはもちろん
ここに至る過程が
しっかりと丁寧に描かれていたからです。
(今となっては、無理筋と思われた鮫島の妊娠問題も無駄ではなかった)

それでなくても衛の方には年齢という負い目があるのに
こういうデリケートな問題を女性から言い出すというのは
精神的にかなりの負担を強いられます。

結婚するまでは夢うつつでも
結婚したら現実の生活を生きなければならない
そんな教訓を、これまで「アホみたい」と罵ってきたドラマから得るとは思いませんでした。

不出来な親に振り回される不幸と
大事な人を守るために結婚したのに
(病気を知らなかったとはいえ)結果として
追い詰めてしまっていたという
自分の不甲斐なさ。

もう悪い星巡りの固め撃ちで
ひとりビールを呷りながら咽び泣く優を
じっくり見せたところは素晴らしかった!

子供っぽい感じが抜けきらなかった優に
初めて「男」を感じましたねぇ。
人間、逆境があってこそ成長するんだねぇ。



加えて「ホラ、面白いでしょう」が
ちっとも、爪の先ほども面白くなかった
今までですが
今回、初めて笑ったシーンがございまして。

東海林が「失恋した空のため」という名を借りた合コンをセッティングし
東海林・空・優という、申し訳ないけど
「東海林撃沈フラグ」がはためくメンバーだったため(東海林、スマン!)
女性陣に無視されまくり
最後に笑いながら、こう呟いたのです。

「俺、この世にいないのかなぁ……」

これまで結構シビアな意見も
歯に衣着せぬ言い方でビシバシ投げ
コレだと思う逸材を見つけたら
とことん口説き落とす、職人気質の東海林。

信頼した優の実家に、図らずも
煮え湯を飲まされた結果となったわけですが
訴訟に至らないよう最善を尽くし
あまつさえ、詫び続ける優に対して笑顔で
「上場に響かなくて本当に良かった」と
言ってのける懐の広さ。

本当は腸が煮えくり返る思いだったでしょうに。

ドラマ全体がイイ感じだと
個々のキャラクターも生き生きしてくるんですね。

空もねぇ、良かったんですよ。図らずも。

検査入院した衛に献身的に付き添う空が
申し訳なさそうにしている衛に
こう言いました。

「休日に予定のない、さみしい男なので」

町田くん本人がこんなこと言ったなら
おいおい、冗談も休み休み言え!ですけど
空が言うと、自嘲気味に嘘は無く
切ない気持ちに、ちゃんとさせるんですね。

黒沢くんの時もそうだけど
「好きな人の傍にいられるだけでいい」っていう役がドハマリする人なんだなぁ、この人。



というわけで、途中の5~6話は
一体何だったんだろうという、まさかの
9話目にしてまさかの褒めまくりになりました。

いやぁ、このジェットコースターは
キツイわぁ。