それはどうかな

心に引っ掛かったことを書き留めます

やるか、やらないか、どっち?

このタイトル
私の大好きな俳優、渋川清彦さんが
「真犯人フラグ」で演じている
阿久津刑事の言い回しなんですが

いよいよ大詰めに差しかかった
SUPER RICH 第10話のキーワードにピッタリ
なので、局を跨いで使わせていただき
大変恐縮させていただいております。

って、お前は町田くんか!(ネタバレ御注意)


そう!今回はとにかく、何はなくとも宮村空
そして、俳優・町田啓太に尽きたのです。
結論を言いましょう。
黒沢くん以来の当たり役ですぞ、これは。


いつも思わせぶりな引っ掛けを見せる冒頭で
何故か空の生い立ちを、しかもそれを
精神科医に対して空自身が語る
という形で見せてきました。

このドラマ初っ端で、私、不覚にも
グッと込み上げて来てしまったのです。

聞いてもいないのに自ら貧乏語りをしてくる
優とは違い
今までほとんど「自分」を主張しない空が
促されるままに淡々と語る家の事情は
別に、優の家ほど悲惨ではありません。

ごく普通の団地住まいで一人っ子。
両親共働きで鍵っ子でも、グレることなく
家族仲も良好。空は普通の「良い子」でした。

両親の代わりに世話をしてくれた祖母と
淋しさを紛らすために飼っていたウサギの
両方の死にショックを受け塞ぎ込んだのが
唯一の「両親に心配掛けた」だったのです。

このたった一度の感情の発露が
「押し殺さないと誰かに迷惑がかかる」と
空を悟らせてしまった。

自分を抑えることでしか
人と上手くやっていけないという自画像を
子供ながらに自ら作り上げてしまったのです。

当時の話を、空は懐かしそうに淡々と話すのですが、それが却って
言葉にできない切なさを静かに伝えて来る。

吠えないから団地で飼うにはちょうどいい
という理由での「ウサギ」でしたが
この「ウサギ」こそが空の生き方そのもののように思えてなりません。

このシーンの最後に精神科医が尋ねます。
「あなたは本当に自分がやりたいこと、実現したことはあるんですか?」

「僕は……」と視線を外すも、すぐに戻し
「このやり方しか知らないんです」と
すべてを悟り尽くしたように答える空。

私、堪え切れず泣きました。
この人は感情の一切を抑え込み過ぎて
表現の仕方さえ分からなくなってしまったのか、と。

そういう目をしていたのです、町田くん。
時々浮かべる笑みにも、ちゃんと悲しさが漂っていて、本当に見事でした!

すっかりノックアウトされたので、長々と語ってしまいました。冒頭だけで。

何故、精神科医に語っていたのかというと
以前のパワハラ上司の被害者たちを代表して
法廷に立つため
証言前のストレスチェックを受けるから。

そう!もうお気付きですね。
全てを我慢して耐える人生を是としてきた空が
先頭に立って、悪を訴える行動に出たのです。
(先程のシーンから法廷への移動のために乗り込んだエレベーターで、顔付きがガラっと変わりました!)

そこまでの空の心境の変化
そして、それに伴うスリースターブックスの
かつて空が傍で守ると誓った衛への危機が
今回は描かれました。



いよいよ病気のことを隠しておけず
社の幹部に話して正式に休みを取り
治療に専念することとなった衛。

その分、他の幹部への負担が増え
もちろん空も山のような仕事をこなします。
文句ひとつ言わず。

衛も優も心配をするのですが
なんせ本人が次々と完璧にこなすので
ついつい空の存在に甘えてしまう。

そんな時、碇さんから
一度退職してフリーランスで好きなように働きたい意向を聞きます。
そして、碇さんは東海林の素質を見抜いた上で
編集者をやってみないかと、水を向けます。

自信の無い様子の東海林に向かって言った
碇さんの言葉に、全ての流れが決まったように思えます。

「向いてる向いてないじゃなくて
 やるかやらないか、です」

言霊とはよく言ったもので
その言葉が刺さるべき人に刺さると
不思議な力を発揮するのですね。

傍でやり取りを聞いていた空の表情が
その言葉に何かを感じ取ったようでした。
そこから
衛不在のスリースターブックスを支える傍ら
自分のやりたいことを「やる」準備を
着々と進めていたのですね。

復帰した衛に
聡美さん、つまりはMEDIA社から
資本業務提携を持ち掛けられますが
事業を拡大したいわけじゃないのと
東海林言うところの「エゲツない」条件付きのせいで、衛は断ります。

しかし、それを聞いた空は……
以前、固辞しつつもずっと持ち続けていた
MEDIA社からの引き抜き話を
遂に受けると聡美さんへ告げるのです!

ここからの空は、もうあの空ではありません。
別人です。別人28号です。

呑気に衛と手巻き寿司食いながら
「宮村さんって、やりたいことやれてるのかな」な〜んて言ってる場合じゃないぞ、優。

その時、誰も居ないオフィスの電気を消した
空の顔付きたるや。
何かを吹っ切った男の顔、いいね町田くん!

運命の翌日、衛は聡美さんから
TOBを仕掛ける旨、宣言されます。

え〜このドラマ、CEOとかやたら業界用語が飛び交うので
調べましたよ、TOB
「株式公開買い付け」のことだそうで
狙いを付けた会社の株を買い漁って
経営権を奪うんだそうです。おそろしや。

資本業務提携よりもそっちの方が旨味が有るとMEDIA社が踏んだ理由は
スリースターブックス社の限られた人間しか知らない大きな契約話が漏れたから。

その場に居ない優と空に疑いがかかり
優は豪徳くんに指南を受けているデイトレーダー部屋に居ることが衛にバレるのですが
その時、豪徳くんが口走ってた「公開買付けが……」が、非常に引っ掛かりますね。

怪しい金儲けに手を出してたわけじゃないと
優は言い訳しますが
衛の心配はそんなことじゃありませんでした。
連絡のつかない空の行方です。

優のスマホの機能で、空が裁判所にいることを突き止め
冒頭のシーンに繋がります。

公判を終えた空に、衛を外して空をCEOにという聡美さんの申し出を問い質す衛と優。

「僕もやってみたくなったんです。
 自分のやりたいことっていうのを」

いつもの柔らかい声と表情の中に
毅然と「決別」を意思表示した空。

あの、聡美さんから初めてオファー書を提示された時
言葉では固辞していたのに
何故か破り捨てるわけでもなく
カバンに忍ばせたままだったのが
気掛かりだったのですが

アレを切っ掛けに、少しずつ空の心は
動いていたのでしょうね。

サブタイトルに「最後の裏切り者」とありましたが
私は空の心境の変化はやむを得ないと思っています。

衛も優も、言うこととは裏腹にやってることは
相当空を傷つけるものだったと思うのです。
心の痛手を被った空を「裏切り者」の一言で
片付けることは、どうしてもできません。



さ〜て、来週の SUPER RICH は?
・衛、秘策はあるのか?
・空、余裕のよっちゃん
・亮、何をいまさら
の、3本です。

散々、アホだのクソだの腐し散らかした
このドラマ。
最終回を前にこんなことを言うと
誰が想像したでしょうか。

来週もまた、見てくださいね〜
ンガッ、ググ