それはどうかな

心に引っ掛かったことを書き留めます

0.9倍速でちょうどええ

綿来かごめの急死と古畑任三郎の訃報という
相次ぐ悲しい不意打ちに
すっかりしおれ返っておりました。



町田「土方歳三」まさかの二回休みで
あの思わせぶりな御登場は何だったんだろう
と、こちらも不安が募る一方。

そこで、はい、出ました池田屋事件
高まる尊王攘夷を力ずくで捩じ伏せんとする
新選組が一躍その名を轟かせた事件ですね。
待ってました!スター土方の見せ所!

いやホントに大スター様の御登場でしたね。
この前も、薄っすらと靄がかかった中から
いかにも来るぞ来るぞな音響効果引き連れて
ジャーン!でしたけど
今回なんか月明かりのスポットライトまで浴びちゃってんだもの。

狭い路地での斬合いなので
派手な大立ち回りではありませんでしたが
斬られ役の見事な演技、肉を切り裂く音
卓越したカメラワーク、不穏な音楽(一定のテンポで同じ音が続く、やたら不安を醸すヤツ)
とにかく天下のNHKが持てる技術を総動員して
スター土方の花道を美しく飾ってくださいました。

さて皆様、お気付きでしょうか。
わたくしまだ一言も、肝心の演者を褒めておりません。

初登場の時の懸念「存在の軽さ」は
やはり払拭されませんでした。

今回、唯一のセリフ「断る。潔く果てよ」
人を斬ることになんの躊躇いも思う所も無い
冷酷非情さを表現するため、敢えて事務的な感じで言ったのか知らんけど
声に深みが無いから「勝手だぞ、姉貴」を
ちょっと恐く言ってみた風にしか聞こえんのよ。残念ながら。

でね。これを書くに当たって
同じとこ何度もリモコンで再生してたら
手元狂って、0.9倍速の「ゆっくり再生」しちゃったわけ。偶然。

そしたら、これが怪我の功名。
速度が遅くなると、音程が低くなり
音色も太くなるでしょ?
すると土方の声、メッチャいいんだ、これが!

元々悪くない声質だから、重みが加わると
一気に大人の男の魅力が爆発するんだねぇ。

これは今後の花咲く役者人生への
何かヒントにならんかね?
発声練習、頑張っておくれよ。頼むよ。

もう30代なんだから、年相応の貫禄付けば
決して「少年剣士」みたいにはならないはず。

最後の一人を斬り終わった時の横顔は
さすがの美形だなぁと感心するけど
今一歩の滲み出る物がほしい。贅沢かな?



さて、ドラマの表題にもあるように
栄一の恩人、平岡円四郎が非業の死を遂げてしまいました。

まだ海の物とも山の物ともつかない栄一を見出したことからも分かるように
何歩も先を見通す天賦の才に恵まれた人だったんですね。

しかし、いつの時代も「出る杭は打たれる」。
秀でた人は、何故か敵を呼び寄せてしまうのです。

ここに結び付けて言うのもなんですが
人生も、目一杯より0.9倍速くらいが生きやすいのかなぁ、なんてね。

円四郎の「死にたくねぇなぁ」。
泣いちゃったじゃねぇか。
町田くんよ、こういう役者におなりなさいよ。